![]() |
![]() |
|
サルバの町を後にした僕は、アーリアの町への道を歩いていた。 サルバの町で得た情報は、落盤事故のことのみ。 ・・・地球へ帰る手段は、まだ無い、か・・・・ サルバやアーリアはこの世界の中で特に大きい、というわけでもないだろう。 もっと大きい都市で情報収集すれば、あるいは何か手がかりが見つかるかもしれない。 ・・・そろそろアーリアを出ないとな・・・ そんなことを考えながら道を歩き続ける。 すると・・・ ・・・ドドドドドドド・・・・!! 「おい!邪魔だ!どけっ!!」 激しい地鳴りと怒声。 馬車が、ものすごい勢いでこちらへ走ってきた。 砂煙がもうもうとあがる。 「うわっ!」 ぎりぎりよけると、馬車はそのまま走り去っていった。 「危ないなぁ・・・何を急いでいるんだ?」 ぼやきながら見送る。 馬車はアーリアの村の方向からきた。 アーリアの村は、来た道のある方向以外は山と森に囲まれている。 アーリア以外に村は無いはずだ。 と、すると、あの馬車はアーリアから来たのか・・・ しかし、アーリアではあんな馬車は見かけた覚えが無い。 ・・・なんだかいやな予感がする・・・ アーリアの村まではまだ少しある。 予感が的中しないことを祈りながら、僕はアーリアへ向かって走り出した。 〜アーリアの村〜 「おお!!クロードさん!!」 村の門に人だかりができていた。 レジスがアーリアの村に戻った僕に気付く。 その顔は青ざめていた。 どうやら悪い予感は的中してしまったようだ・・・ 「・・・どうしたんですか?みなさん集まって・・・ッ!!」 そう聞こうとして、ある人に目が止まった。 「ウェスタさん!!」 レナの母、ウェスタさんが、ほかの人に上半身を支えられながら、倒れていた。 ひどい傷を負っている。 「ウェスタさん大丈夫ですかッ!! いったい何があったんです!!」 その声に気付き、ウェスタさんがかすかに目をあける。 「ク・・・クロードさん・・・ レ・・・レナが・・・アレン君に・・・ ・・・お願い・・・レナを・・・助けて・・・!」 「アレン?!アレンって誰です?!」 「・・・サルバの町長の息子じゃよ・・・」 苦しそうにするウェスタさんの代わりに、レジスが答えた。 アレンはレナの幼馴染で、昔はよく遊びにきていたらしい。 とてもやさしくまじめな青年だったそうだ。 しかし神護の森にいたレナに会うと、レナを従者に拘束させ、 サルバ村へと連れ去ろうとしたところをウェスタさんが止めようとしたが、 アレンは何か不思議な力でウェスタさんをなぎ倒し、 村人がそれ以上傷付くならと、レナは自分から連れて行かれることを選んだそうだ。 「一緒に行くから!お母さんに・・・村のみんなにひどいことしないでッ!! ・・・そう言ってレナはわしらをかばい・・・アレンに・・・ わしらはどうすることもできんかった・・・」 レジスがうつむき話す。 「・・・それで!!レナはどこへ?!」 「恐らく、アレンの屋敷に・・・」 それだけ聞くと、僕はすぐに村の外へ向き直り、駆け出した。 ・・・無事でいてくれ・・・レナ!! 1.レナとアレンのシーンを見る 2.先へ進む クロードがサルバへ出発した後、レナは一人神護の森の木の根に腰を下ろしていた。 見上げると木漏れ日がまぶしい。 「・・・すみません、クロードさん・・・」 ・・・私ったら、自分が落ち込んでいるからって・・・ クロードさんも、知らない世界へ来て困っているだろうに・・・。 「・・・クロードさん、さみしそうな瞳をしてた・・・」 ふうっと、ひとつため息をつく。 自分を元気付ける意味も込めて、勢いよく立ち上がる。 「・・・村へ、帰ろう・・・」 森を抜け、村の入り口の橋へ向かう。 と、そこに見たことのある影。 あれは・・・ 「レナ・・・」 「アレン!?」 レナの幼馴染のアレンだった。 長身痩躯、長い金髪はポニーテールのように頭のうえでひとつ結ばれている。 黒の服に襟の大きな長いマントを着ている。 まさに絵に描いたように美しく、やさしそうな青年だ。 「久しぶりね、アレン。 最近ちっとも顔を見せないんだもん、病気してるのかと思っちゃった。」 アレンに近寄るレナ。 ふっと、アレンの目が濁る・・・ 「・・・準備をしていたのさ。少し遅くなってね・・・ やっと整ったから・・・君を迎えに着たんだ・・・」 「準備って・・・何の?それに、迎えにって・・・」 レナはアレンの言葉に覚えが無かった。 何か・・・おかしい・・・ しかし、そう気付いたときには、アレンはもうレナの腕をつかんでいた。 「・・・もちろん・・・僕たちの婚儀のための準備さ!!」 「えっ!!」 何を言っているのか、すぐには理解ができなかった。 つかまれた腕を振り解こうとしても、まったくかなわない。 「おい!こいつを連れて行け!」 アレンが後ろにいた従者に命令する。 従者たちが駆け寄り、アレンの手からレナを預かった。 「いや!やめて!」 必死で抵抗するが、大の男数人に囲まれては、手も足も出ない。 レナは成す術も無いまま、アレンたちに連れて行かれた・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ アレンはまるでそうすることが当然であるかのように、レナを捕らえたまま村の中央を歩く。 「レナ!!」 村人たちが騒ぎを聞きつけ集まった。 アレンを囲む。 「ふ・・・これはこれは、皆様おそろいで」 「お母さん助けてっ!!」 「アレン!!これはどう言うことじゃ!!乱心したかっ・・・レナを離さんか!!」 レジスがアレンの前に出た。 しかしアレンは表情一つ変えない。 冷徹な声で言い放つ。 「いやですね・・・これから大切な用事がありますので・・・そこをどいてくださ・・・」 「ここは通しません!!・・・レナを離して!!」 アレンが言い終わるか終わらないかのうちに、ウェスタがアレンの前に立った。 両腕を上げ、アレンの行く手をさえぎる。 それを見たアレンは、口の端を吊り上げた。 「―・・・そうですか・・・」 無気味な笑い。 アレンから邪気のようなものが立ち上がる。 その威圧感に、レナは凍るような感覚を受けた。 「では・・・力ずくで通らせてもらいます!!」 アレンがそう言って腕を広げ、こぶしを開いた瞬間!! ―ゴアッ!!! アレンの周りに風が巻き起こり、地面を裂いていく。 強い風と舞い上がる砂に、ウェスタの肌が見る見る傷付いていく。 「お母さんッ!!」 レナが悲痛な叫びをあげる。 ウェスタは強風にそのままなぎ倒された。 しかし・・・ 「・・・お願い・・・レナを・・・離して・・・」 傷付き血を流しながらも、アレンのマントの裾を必死につかみ、アレンを引き止める。 アレンがそんなウェスタを見下ろす。 そして・・・ 「邪魔を・・・ アレンが、牙をむく・・・ 鋭く長い爪を持った腕を振り上げる。 ・・・そう・・・まるで獣のような・・・ ・・・スルナッ!!」 振り上げた腕を、ウェスタに向けて一気に振り下ろした! アレンの爪が、ウェスタに襲い掛かる。 「―やめてッ!!!!」 しかしその寸前、レナがアレンの腕にしがみついた。 アレンの動きが止まる。 「行くから・・・一緒に行くから!お母さんに・・・村のみんなにひどいことしないでッ!!」 「―ふん」 アレンは振り上げた腕を下ろす。 「行くぞ。」 振り返り、従者に声をかける。 牙や爪は、もう消えていた。 村の外の馬車へ向かって、歩き始める。 村人達は、それをただうつむいて見送るしかなかった・・・ |
||
![]() |
![]() |